語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008/01/15

[]026号 「英語力とは何か」 12:07 026号 「英語力とは何か」 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 を含むブックマーク はてなブックマーク - 026号 「英語力とは何か」 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 026号 「英語力とは何か」 - 語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 のブックマークコメント

 

  

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英語・仏語・伊語 トリプル三冠王による

語学の虎の巻 [書評] 英語・外国語学習法 - 026号 -

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こちらです。

http://shibutora.g.hatena.ne.jp/melma/20070620

 

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■今週の本 「英語力とは何か」 山田雄一郎

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買う??: ★☆☆☆☆

これを面白いと思う人は、あまり多くはいらっしゃらないと思います。

まえがきにもあるように、ハウツーものではなく、実際のトレーニングに

ついては、第4章にわずかに触れられているだけです。

他方、語学学習法について読むことが好きだという方、第二言語習得に

ついて興味のある方にとっては、専門的すぎず、面白い本だと思います。

私はとても気に入りました。

 

実行可能度: ★★☆☆☆

記載されているトレーニング自体は、実行可能と思います。

 

「英語力とは何か」 山田雄一郎

大修館 2006.05  

アマゾンはこちらから

http://www.amazon.co.jp/dp/4469245143/ref=nosim/?tag=gogakunotoran-22

 

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■エッセンス

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学校教育の現場では「英語力」とは何かについて、明確に理解されておらず、

また、最近の「英語力」についての研究の成果も伝わっていない。

「英語力」を測るための試験については、「言語能力が解明されていない以上、

英語力だけを数値化してこれに全幅の信頼を置くと言うことには無理が

つきまといます」

 

我々日本人にとっての「英語力」は、日本語を母語とするバイリンガル

としての「英語力」であり、ネイティブの母語としての英語力とは異なる

ものとして考えるべき。

その際に、二言語取得者に見られる共通基底能力を生かすことで、日本語で

習得した技術を英語のコミュニケーションに生かすことができる。

 

英語力の訓練領域は次の4つ(162ページ)

1.基底能力(知識や経験)の強化 (日本語によると英語によるとを問わない)

2.英語の出入力チャンネル(直通経路)の形成とその強化

3.言語形式に関する知識(文法や語彙)の取得とのその活性化

4.言語形式を運用する技能の訓練(四技能を中心とした技術的訓練)

 

学校教育で為されているのは上の三番目と四番目の一部。

これまで見逃されてきた一番目と二番目を強化する必要がある。

 

二番目を強化する方法として以下の三つを上げます

A. 語彙力

B. 統語力

C. 論理的思考力

 

語彙力については、英和辞典の訳語に引っ張られずに、語の用法を理解

するよう努めること。

統語力については、レベルに合わせたリスニング/ディクテーションで

鍛える

論理的思考力は、レベルに合わせたリーディングで鍛える

 

 

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■内容

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最後の訓練法のところだけ読むとパッとしません。

 

リスニング/ディクテーションの部分は著者も書いているように、以前

ご紹介したクラーク博士のディープリスニングと同じですし、リーディングは

最近流行の多読と同じ感じです。

 

「英語力」についていろいろ分析して、そこで出てきた要素から不要な

ものをそぎ落としていったら、結果的に既にある外国語学習法にたどり

着いたようにも見えます。

 

それでもなお、外国語学習法について考えている読者には興味深いヒントが

いろいろと発見できます。

 

第一章で、A子さんの英文和訳が改善したという例を出し、「英語力」が

伸びたと書いています。

ネイティブのような「英語力」を目指す場合は、当然のことながら「日本語に

訳す」という作業は発生しませんから、日本語訳が上手になったことをもって

英語力が伸びたという著者の意見には一瞬違和感を覚えます。

 

しかしながら、我々は第一言語としてではなく、第二言語として英語(或いは

他の外国語)を学ぶわけですから、翻訳する能力を「英語力」に含めることも

可能だと思います。

 

Roberto Lado という学者は、読む・聞く・書く・話すの四技能に、翻訳

技能を加えた五技能を提唱していたようですし、そもそも、各人がどの

技能に習熟しようとするかは個人の勝手であるという千野栄一的アプローチ

であれば、それが五技能であっても何の問題もないでしょう。(千野栄一

「外国語上達法」では、読む・聞く・話すの三技能と言っていました。

(29ページ))

 

それにも増して、翻訳技能を加えることで、バイリンガル能力としての

英語力の位置付けを明らかにし、それによって日本語能力を活用して英語

能力を伸ばすというアプローチを導入します。

「ネイティブの赤ちゃんが英語を学ぶように」というやり方では、日本語の

能力を英語習得に生かせず、もったいないことになります。

 

A子さんの日本語訳が上手になったのは、著者の注意事項を守ったことで、

「英語力が急激に伸びたのではなく、これまで蓄積した英語知識が活性化

できるようになった」(12ページ)ということですが、この注意事項が興味

深いのでご紹介します。

 

1.辞書の訳語は、あくまで参考例である。直接利用するのではなく、

それを日頃の自分の言葉に変えて用いること。

2.訳文が日本語として通じないものは、すべて間違った翻訳である。必ず

自分で納得できる日本語にすること。

3.可能な限り、英語の語順に沿って翻訳すること。基本的には、句読点

ごとに区切って訳文を案出すること。

4.数学の問題を解くわけではないから、できるだけ早く反応するよう

心がけること。

 

さて、著者の共通基底能力の考えは、カミンズの氷山説に基づいています。

バイリンガルの能力を互いに独立した二つの言語能力として説明するのでは

なく、その根元でつながっていると考えるものです。(水面に氷山が二つ出て

いるが、水面下でつながっている)

 

この仮定が正しければ、日本語と英語と共通している部分は、だぶって

訓練する必要は無いと言うことです。

 

もちろん、共通基底能力が問題になってくるのは、上記エッセンスで書いた

訓練領域1-4のうちの1だけですから、日本語が出来るからと言って

すぐに外国語が出来るようになるわけではありません。

 

また、著者はカミンズのBICS(基本的な対人コミュニケーション技能)/

CALP(認知的学習のための言語能力)、市川力の遊び場言語/教科理解言語

という区別を導入します。

 

親の仕事の関係で米国に住むこととなった子どもたちは、遊び場言語としての

英語はすぐに身に付けるが、教科理解言語としての英語は何年も身につかず、

結局身につかないまま帰国することも多いということです。

 

著者は、共通基底能力が働くためには、それぞれの言語がCALPのレベルに

達していないといけないとしています。

その為には、物事を説明する力、抽象化や一般化の能力、論理的な文章を

書く力、説得力などをコントロールするメタ言語意識を開発する必要がある

(167ページ)としています。

この辺りは、以前ご紹介した「外国語を身につけるための日本語レッスン」

(三森ゆりか)の内容を指しています。

 

現在早期英語教育が推進されようとしていますが、遊び場言語から教科理解

言語、あるいは子供英語から大人英語への移行をどのように行うかが課題です。

この部分については、市川力「英語を子どもに教えるな」「『教えない』英語

教育」をご参考にしてください。

 

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■感想

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個人的に、非常に興味深い本でした。

 

私自身、イタリア語と英語をやっている間に、大学以来放置していた

フランス語の能力がグンと伸びた経験から、カミンズの共通基底能力に

ついて非常に納得していたのですけれど、それは近い言語の間でのみ

起きるものではないかと思っていました。

それは、(著者のモデルによれば)各言語の入出力チャンネルが近いことから、

直通経路の形成とその強化が容易であったということになります。

 

日本語との間に共通基底能力を想定するという考えも、私自身、外国語を

やってから自分の日本語が変わったように感じたことが何度もありました

ので、納得できるものでした。

 

また、四技能に翻訳技能を加えた五技能の考えがあること、日本語話者に

とってのバイリンガル能力として英語力をとらえるというアプローチは、

英語ネイティブのような英語力を目指すというこれまでの標準的な考え方に

対するもので、面白いと思いました。

 

多くの人に面白い本ではないですが、これを面白いと思う人と語り合う

機会が欲しいと思った本でした。

 

 

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■おまけ

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盛りだくさんの内容で、上手くまとめきれなかった感じがしています。

おそらく、今後も何度もこの本に戻ってくるような気がしています。

 

いろいろな文献が引用されていて、ここからさらに読書が拡がりそうです。

 

子ども英語から大人英語への移行については、

市川力 「『教えない』英語教育」中公新書ラクレ

http://www.amazon.co.jp/dp/4121501764/ref=nosim/?tag=gogakunotoran-22

 

市川力 「英語を子どもに教えるな」中公新書ラクレ

http://www.amazon.co.jp/dp/4121501209/ref=nosim/?tag=gogakunotoran-22

 

 

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発行者略歴

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澁澤寅彦 (しぶさわとらひこ) (ペンネームです)

1962年生まれ。福井県出身。証券会社の経理マン

 

2002年から2005年の四年間に、英仏伊の3カ国語それぞれで三冠

(ガイド試験、検定1級、EUのC2レベル試験)を達成した。

 

四半期決算でアップアップ中

 

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メルマガ名: 語学の虎の巻[書評]英語・外国語学習法

発行者 澁澤寅彦 ( shibu.tora@gmail.com)

発 行 : まぐまぐID= u0026nbsp;0000238273

配信停止 : http://blog.mag2.com/m/log/0000238273/

 

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