語学の虎の巻 [書評]英語・外国語学習法 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008/06/25

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英語・仏語・伊語 トリプル三冠王による

語学の虎の巻 [書評] 英語・外国語学習法 - 046号 -

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このメルマガの編集方針につきましては、創刊準備号をご覧ください。

こちらです。

http://shibutora.g.hatena.ne.jp/melma/20070620

 

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■今週の本 「英語のメンタルレキシコン」

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買う??: ★★★☆☆

とてもお勧めなのですが、「分厚い、専門用語が多い、難しい、眠くなる」

で★三つ。

 

読んでいただきたい方

「英語教育、言語コミュニケーションの研究を志す大学院生、小・中・高の

現役英語教師、必読の一冊!」(帯より)

 

「英語のメンタルレキシコン」 門田修平編著

松柏社 2003.06  

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■エッセンス

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頭の中にある辞書はどのようになっていて、どのように働くか。どうやって

作られていくのか、についての学術書です。

語彙習得に役立つヒントがあちらこちらに。

 

 

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■内容

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第二章「第一言語における語彙取得とことばの処理プロセス」

ガラスのコップに入った冷たい牛乳を指さして、母親が子供に「これは

ミルクよ」と言うとき、それがコップを指すのか、中身の液体のことか、

白い色を差すのか、液体である状態を指すのか。それらを子供はどうやって

判断し学んでいくのか。

「ラベリング」「パッケージング」「ネットワーキング」の三段階で

発展するとのこと。

外国語の多読で、あるいは外国で生活して辞書を使わずに単語を増やして

いくのはこんな感じでしょうか。

 

第三章「語彙知識とその測定」

「学習者の語彙知識は英語力の根幹であり、英語の四技能の運用能力を

十分に発揮するための基本的な能力である」(35ページ)

 

まずは語数の数え方が四種類提示されます。(なかなか新鮮)

 

延べ語数方式

同じ語が何回登場しても、そのたびごとに数える方法。

実務翻訳の翻訳料金とか、多読の語数カウントに使うのはこの方式。

 

異語方式

形が変われば別単語。ただし、二度目以降は数えない。

 

見出し語方式

辞書の見出し語。複数形や過去分詞や比較級などは別の語としない

 

ワードファミリー方式

派生形も同じ語とカウントする。たとえば –ly とか un- などの接辞を

つけたもの。

 

ワードファミリー方式の語彙数を見出し語方式で表すと、1.6倍から2倍に

なるとのこと。

本書のほとんどの箇所でワードファミリー方式をベースに議論が進むので

重要です。

 

接辞を覚えると語彙が増える。happy と unhappy で二つの単語になると

いうのは、見出し語方式での話で、ワードファミリー方式においては増えて

いないことになります。(unhappyなことです)

 

他方、「日本の学習者には屈折語や派生語に関する知識が乏しく、ワード

ファミリー方式による算定は適当でない」(40ページ)という意見もある

ようです。

ワードファミリー方式が主流になっていると言うことは、そのような語彙の

習得の仕方が本来だと考えられているのでしょう。

よって(本書には記述はありませんが)「屈折語や派生語を強化して、すでに

一部獲得している語彙を完全なものにしよう」と考えるのがよいのでしょう。

少ない労力で活用範囲が広がるわけですから、積極的に。

 

また、非母語話者が読解力で一定のレベルに達するには、ワードファミリー

方式で3000語レベル。若年母語話者が読書を楽しむには5000語程度必要

との説が紹介されます。

 

さらに、テキストを読むことで未知語を学習するには、6~10回、その語に

出会う必要があるという説も紹介されています。

語彙知識の広さと深さという概念も紹介されます。

 

第六章「語の意味表象へのアクセス」

ここで提示される「二重アクセスモデル」においては、文字から音韻表象を

経て意味表象につながるルートと、文字から直接意味表象につながるルートの

二つが描かれています。

 

読書の際に黙読であっても脳内音読するケースがありますが、このモデルに

よれば音声化する必要は必ずしもなく、文字から直接意味につながるケースが

あると言うことです。

 

第七章「英語の語彙知識と言語運用」

読解において、語彙が大きくなるにつれて語彙サイズの果たす役割が少なく

なり、語彙知識の深さが重要性を増す。(126ページ)

 

「学習者が英語に触れる機会が増えるにつれて、使われる単語の使用頻度は

変化する。頻度の高い2000語は少なくなり、University Word Listに出て

くる使用頻度の使用が増える」(130ページ)

 

語彙について、発表語彙=1/3*受容語彙だというようなことを、齋藤孝氏、

井上一馬氏が書いていたと思いますが、本書によるとその係数は、受容語彙

レベル5000語においては0.3。逆に1000語レベルだと0.7になります。

 

受容語彙>発表語彙の関係の中で、5000語の使える単語を身につけるためには

15000語の受容語彙を覚えなさいという主張があります。

 

私もこれまでは15000語覚えても5000語しか使える単語は残らないという、

何となく定着率のような感じで考えていました。

 

実際は15000語知っている人も、発表語彙としては5000語くらいしか

使わないと言うことであり、差の10000語は、読み聞きでわかれば良い

単語と言うことでしょう。

 

グラフの傾きが変化すると言うことは、初期レベルにおいては受容語彙の

かなりの部分を発表語彙に使えると言うことであり、また、そのような学習・

指導がなされるべきだと言うことです。

 

「全体として『発表語彙』を目指した指導が『受容語彙』の定着を目指した

指導よりも、語彙学習が促進される傾向が認められた」(133ページ)

 

リーディングと語彙力の関係では

読む=語彙*背景知識*文法 (本書では掛け算の形になっていませんが)

ここでは、重要性もこの順序です。

単語の意味を並べていってわからなかったときに初めて文法知識が登場する

というのは、以前「英文読解ストラテジー」でも読みました。

 

(引用開始)

「さて、ここで読解における語彙と文法の果たす役割を考えてみたい。Bever

(1970)やSchlesinger(1977)は、文の理解には統語上の処理、つまり文法の

操作よりも、単語のもつ意味のほうがはるかに重要な役割を果たすと

述べている。彼らにいわせると、外国語の文法の知識が多少不足していても、

文中の単語それぞれのもつ意味から十分推論を働かせることは可能で、

それにより文全体の理解に至ることが多いという。そして、それでも文意が

不鮮明であったり、あいまいで納得のいかない場合にのみ、統語上、つまり

文法上の知識に頼るのだと指摘している。ひるがえって、読む(あるいは聞く)

場合とは異なり、話したり、書いたりして表現する場合には、統語体系を

正確に操作できなければ、自己の意図を正しく伝えることができないため、

統語上の詳細の知識が重要となるという。」

(ここまで)

(「英文読解のストラテジー」大修館書店 天満美智子 68ページ)

 

注意

・ここではリーディングにおける文法知識の重要性が低いと言っている

だけのことで、その他の英語運用能力でもそうであるというわけでは

ありません。

・語彙と文法の境界も無いという考え方もあります。(本書でも後半で

紹介されます。)

 

 

既知語の占有率と読解について

「テキスト中の単語の95%を知っていれば相当な読解ができ、文脈から

未知語の推測ができる」(134ページ)

 

これと、先に挙げた「文脈の中で単語を学習する効果については、読んで

いるテキストに未知語が何回出てきたらその単語の意味が学習されるかと

言うことに関して、Saragi, Nation and Meister (1978)では10回、

Nation(1990)では6.7回の繰り返しが必要という見解がある」(44ページ)や、

(128ページ)「文脈から意味を推測することが必ずしも記憶につながらない」。

あるいは「段階別読み物(graded readers)を使った多読が語彙習得には

効果が無いという実証実験がある」(292ページ)などのあたりは、多読を

行う学習者には興味深いです。

 

楽しさを優先するあまりに正しい理解度をそれほど気にせず、同時に多読を

通して語彙を増やそうとする一部の多読実践者のアプローチでは、そもそも

正しく理解していないかもしれない文脈の中で未知語の意味を正しく推測

しようとするのであり、無理があると考えます。

 

本書に紹介されているように、95-98%の既知語により書かれたテキストを

読み、その中で未知語を推測するようにし、また多読は語彙の広さではなく、

深さを強化するものだと考えるべきでしょう。

 

もちろん、多読には語彙強化以外の多くのメリットがありますので、それを

否定するものではありません。未知語の習得には向いていないと言うこと

です。

 

第十三章「外国語の語彙学習と指導法」に、「欧米の出版社から出された

段階別読み物はGSLを使って書かれたものが多い」(269ページ)とあります。

 

GSLは、Michael WestのGeneral Service List for English Wordsで、

ワードファミリーで2000語が収録されています。

 

「英語にはワードファミリーで54000以上の単語があり、強要する大人の

母語話者でおよそ20000のワードファミリーを知っていると言われている。」

(266ページ)

 

他に興味深かったのは、285ページの接辞の知識を増やすことで語彙が

増加するという話です。

 

「頻度からみて最初の100語はゲルマン形の語が97%を閉めているが

1000語を超えると60%以上の語がラテン語、ギリシャ語等の語源を持つ

単語である。しかもそのようなラテン語、ギリシャ語の大多数の語が接辞を

つけて、ワードファミリーを形成するのである」

 

これはどういうことでしょうか。

 

日本人はラテン語系の単語を使いすぎる/giveとgetですべては表現できる

などという主張があります。

 

これは(推測するに)英語圏での会話を念頭に置いてのことだと思います。

 

「giveとget」と言っている松本道広も「giveやgetを用いた口語文は質が

落ちるので文章ではあまり使うべきでない、という人が多い。私もそう思う」

(「英語アレルギーの治し方」 松本道弘 149ページ)と書いています。

 

「基本動詞+前置詞(副詞)」のいわゆるphrasal verbにおいて、その

ニュアンスを正しく理解し使いこなすのは、非母語話者では無理だと

思われます。

その点からは、非母語話者の間ではラテン語系語彙の方がわかりやすい

と考えます。

 

さらに、話者がラテン語系言語(イタリア語、フランス語など)話者であった

場合、母語からの置き換えにより、ラテン語系語彙が使われる割合はさらに

高くなると考えます。

 

以上を踏まえるならば、英米文化・生活の深いところまで降りていこうと

いう人にとってはphrasal verbが必要ですが、そうでないならば、そちらは

割り切って、ラテン語系語彙の強化に努めるというアプローチがあるのでは

ないかと思います。

 

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■感想

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脳の中で語彙の処理がどのようになっているかはよくわかりませんが、

その働きのモデルを作ってみて、その仮説を検証するためのテストを考え、

テストし、そしてモデルを修正する。さらにはそのモデルに基づいて教育・

学習のやり方を変えていくというのはとても面白かったです。

 

内容は決して一般的ではない本書を世に送り出した松柏社さんに拍手です。

松柏社の「より良い外国語学習法を求めて―外国語学習成功者の研究」と

いう本を昔読んで驚いたのですが、今回もそんな感じです。

(実は松柏社は語学教育関係の本をたくさん出しているということを今回

初めて知りました。)

 

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■おまけ

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中古のポータブルPCを買いました。

Windows Vista + Office 2007 で、まだまだ使いこなしていませんが、

会社の行き帰りにもPCに向かうことができるようになりましたので、

これまで以上にアウトプットに努めたいと思っています。

 

それとは全く関係無しに、左肘に水が溜まって腫れ上がりました。

 

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発行者略歴

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澁澤寅彦 (しぶさわとらひこ) (ペンネームです)

1962年生まれ。福井県出身。証券会社の経理マン

 

2002年から2005年の四年間に、英仏伊の3カ国語それぞれで三冠

(ガイド試験、検定1級、EUのC2レベル試験)を達成した。

 

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メルマガ名: 語学の虎の巻[書評]英語・外国語学習法

発行者 : 澁澤寅彦 ( shibu.tora@gmail.com)

発 行  : まぐまぐID= 0000238273

配信停止 : http://blog.mag2.com/m/log/0000238273/

 

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