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2010/01/29

「英語を学ぶ人・教える人のために『話せる』のメカニズム」

11:29

 

一応語学ネタのブログだと言うことでたまには真面目なネタも入れないと読者が離れていってしまうなどと思いつつ既にそのような読者はいなかったりするのですが。

 

先日の「みなもちゃんの話(http://shibutora.g.hatena.ne.jp/shibutora/20100105/1262695707)」へのコメントで井上大輔さんにご紹介いただいた「英語を学ぶ人・教える人のために―「話せる」のメカニズム」を読みました。

本棚スペースの問題が解決しなかったので図書館で借りてきました。

 

 

「おわりに」にありましたが、第2言語習得(SLA)教育関連の書籍に重要な情報がたくさんあるのに一般の学習者には伝わらず、一般学習者向けの外国語学習本にはいい加減なものが多いというのは激しく同意します。

 

他方、その間をつなぐ本を作りたいという著者の狙いは概ね失敗しており、この本もやはり第2言語習得教育の研究者よりとなっていると感じました。

 

私のおちゃらけブログのような場所でさらに噛み砕いて紹介していくのが必要なのでしょうなぁ。(私が本を書けば良いのですが。昨年取りかかった「グラフと方程式で学ぶ外国語」は忙しくなりすぎて休業中だし)

 

それはそれとして。

 

SLAの研究がどんどん進んでいるので、本書(2006/3)の記述も一部追い越されているものがあるような気もしました。(うろ覚えですが、第2言語の文法事項の習得順序(Natural Order)は母語によって異なるという記述をどこかで読んだような)

 

と言いつつ、いろいろと考えさせていただきました。忘れていたことも思い出したし。

 

最初の方で、2003年の「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」が紹介されています。そこでは

 

・中学校卒業段階:挨拶や応対、身近な暮らしにかかわる話題などについて平易なコミュニケーションができる

・高等学校卒業段階:日常的な話題について通常のコミュニケーションができる。

 

とあるわけですが、そのレベルに達するのにいったい何時間が必要なのか、その必要時間と比べて中高での英語の授業時間が充分であるかどうかが全く検討されていないと著者は書いています。

 

英語ができるようにならないのは英語教育に問題があるとされてきたわけですが、そもそも英語教育(だけ)では英語はできるようにならないということを再認識する必要がありますね。

 

「文法が重要だからと言って文法学習が重要とは限らない」(79ページ)

ここだけ読むと「文法学習は重要ではない」と読めてしまうのですが、全体を読むとそうではないと分かります。(全体を読まないとそう分からないのは書き方としてどうかと思いますが)

明示的な知識として学習した文法をどのように使える文法につなげていくかが重要だということです。

 

認識させられたことの一つに、読む・書くは反応時間に余裕があるのに対し、聞く話すは余裕がないということです。

これまでの私の方程式の中では、読む書くと聞く話すの違いは音声の介入だけだと思っていたわけですが、ここに反応時間という要素を追加することにします。

読む書くにおいては間違えないのに聞く話すでは間違えるということから、聞く話すにおいては自動化の重要性が高いと言うことです。

「聞いたり話したりすることには、必要な言語処理を瞬時に行わなければならないという時間的な制約が伴うため、同様の条件で言語処理を行う経験を積まなければ、聞いたり話したりできるようにはなりません(201ページ)」とありますが、そうなると外国語に触れる機会が少ないと難しいですね。読むについてはAudioBookを使った聞き読みとか、音読により後戻りを許さないという対応で解決できるのではないでしょうか。

話すの方は、独り言とか、瞬間英作文とか、逐語日英通訳とかである程度はいけそうな。

 

第5章では、(大量のインプットを前提とする)コミュニカティブアプローチにおけるアウトプットの役割が書かれています。

 

これまで私が書いていたのは「アウトプットをしようとしてみて言えなかったという経験から来る強い印象から、それをどのように表現するかをその後のインプットの過程で探すようになり、見つかった場合にそれが定着する」というようなことでしたが、ここを読むと、それだけではないようです。

 

何か言おうとしてみて、上手く言えない場合の対応は次のように分かれるのではと思います。

 

・言えないで終わる。(言えなかったという印象が次につながる(前述))

・これまでの文法知識から仮定して言ってみる。ひょっとしたら相手が直してくれることで正しい文法が身につく。

・違う言い回しを使う(回避行動。これだと「できなかった」という印象も弱くていつまでたっても知識が付かない)

・話題を変える(通訳などやる場合にはこれはできないが、自分が話者である場合はこれもあり)

 

以前私は、会話も分断すると1人で学習できるパーツに分けられると書いたのですが、相手が修正してくれるかも知れないというところは1人では難しいです。と言いつつ、相手が直してくれるケースはそれほど多くないと著者も書いています。

英会話のレッスンというシチュエーションを除けば、文法的に間違っていても意味が通じる場合はそのまま流れてしまい、意味が通じていない場合は聞き返されるというくらいでしょうか。

  

興味深かったこととして、習得順序(決まった順序でしか文法事項を覚えない)の関係で、順序が違えば教えても覚えないこともあるし、教えていないのに覚えることもあるということです。

この点から、習った文法事項だけを含んだテキストを与える、あるいは習った文法事項だけを用いて教師が生徒に話しかけることは間違いであるということです。

 

確かに明示的知識としての文法はいずれにせよ文法知識の総量のうちのほんのわずかですし、非ネイティブであっても使用する中で身につけても構わないでしょう。

  

 

今回この本を読んで、自分の外国語学習に関して反省することがありました。

 

それは「化石化」に関してです。

 

これまでも化石化については何度か書いていて、主として「例えば海外に移住するとか海外駐在になった場合で、ある程度その国の言葉で用が足せるようになると、それ以上に文法事項を学ばなくなってしまう。ブロークンなままで止まってしまう」というようなことで書いていました。主としてアウトプットの化石化についてでした。

 

私自身はそんなことはないと思っていたのですが、どうもそうとも言えないようです。

 

まず、インプットにおいても化石化というのがあるのではないかということ。

 

「インタラクションをしている第2言語学習者が、インプットの中に含まれる文法規則に注意を払うのは、その文法規則がインプットを理解する鍵になる場合や、その文法規則の表す意味がわからないために対話者との意思疎通に問題が生じた場合だけです(212ページ)」

似たような話は私も前に書きました。ネイティブであれば文法事項の処理が自動化されているので、単語だけ連ねていっても問題ないのですが、我々はそうではありません。

そもそも会話においてはそれほど難しい文法事項は出てこないので問題はないのですが、これが小説を読むとかになると、大きな勘違いが起きている可能性があります。

勘違いをしていても「面白かった」という読後感があれば、文法知識に頭が回ることはないでしょう。私もそのような読み方をしている可能性は大いにあります。

 

また、アウトプットにおいても、前述の回避行動のような動きに出るならば、自分の化石化に気づく機会が無いと言うことになります。

 

文法書の通読の必要性を再度認識させられたということでありました。

 

 

本書全体のトーンとしては、「大量のインプット」+「文法学習による気づき」+「大量のアウトプット」が必要というところでしょうか。

そもそも外国語学習には時間がかかるという前提なので仕方ないのですが、耳に心地よい言葉を期待している学習者にはつらいものがあります。

 

ここでの「文法学習による気づき」に「フォーカスオンフォーム」が出てくるのでしょう。

 

図書館で借りた本なのでもう返さないといけないのですが、ブックオフに出てきたら(アマゾンの中古が安くなってきたら)購入したいと思います。

これを書いた時は著者は福井県立大学で教えていたとのことでの親近感もありますし。

 


 

 

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井上大輔井上大輔2010/02/01 23:21>第2言語の文法事項の習得順序(Natural Order)は母語によって異なる>という記述

これは多分岩波の外国語学習の科学にあったのではないでしょうか。ここらへんは、多分研究者によって母語が違うと差が出るという人と、母語が同じでも差が出ないというのは別れる領域で、まだ完全にこうだといえる感じではないのだと思います。

後、インプットにおいても化石化はあります。確か本の中では、複数形のsについて書かれていたと思います。ほかにも、例えば冠詞などはインプットでも化石化の起こりやすいところだと思います。後、習得順序の順番に関して言えば、3単元のsなどは最初に習うのに、身に着けるのが遅くなるというので、面白いなところではないでしょうか。